創業融資のポイント

1.門前払いになる業種

〈日本政策金融公庫の定義〉(日本政策金融公庫HPより抜粋)

ほとんどの業種の中小企業の方にご利用いただけます(金融業、投機的事業、一部の遊興娯楽業等の業種の方はご利用になれません。

〈信用保証協会の定義〉(東京信用保証協会のHPより抜粋)

商工業のほとんどの業種でご利用いただけます。ただし、農林・漁業、遊行娯楽業のうち風俗関連営業、金融業、宗教法人、非営利団体(NPO法人を除く)、LLP(有限責任事業組合)等、その他当協会が支援するのは難しいと判断した場合はご利用いただけません。


その会社がどのような業務を行っているかは、登記簿謄本の「事業目的」にこれらの業種が掲載されているかで否かで判断します。法人を設立する際は、事業目的欄にこれらの業種を記載しないのが鉄則です。
不動産・保険のコンサルタントが行う「投資助言」なども、金融商品取引法の管轄(金融業)に入りますので注意が必要です。

2.融資を受けれない法人形態

日本政策金融公庫信用保証協会
株式会社
合同会社
NPO法人
一般社団法人×
一般財団法人×
LLP×

ソーシャルビジネスを開始するとして、一般社団法人・財団法人でスタートすると資金調達の面で苦労する可能性があります。

具体的に、信用金庫・銀行は、相当の取引実績がないと「信用保証協会の保証付き」でしか融資を行いません。一般社団・一般財団は、この信用保証協会の保証をそもそも受けることができないため、取引実績を作る以前の話になってしまいます。そのため、日本政策金融公庫以外の金融機関からの資金調達が難航します。

3.自己資金の範囲

〈前提知識〉-新創業融資制度の自己資金要件について- (日本政策金融公庫HPより抜粋)

事業開始前、または事業開始後で税務申告を終えていない場合は、創業時において創業資金総額の
10 分の1 以上の自己資金
を確認できる方。

経験上、自己資金が融資希望額の1/10しかない場合の融資はかなり厳しいです。
この場合に満額融資を受けるには、日本政策金融公庫+信用金庫(信用保証協会付き)の二か所借入が必須となり、融資実行まで時間がかかります。
融資希望額に対して1/3以上の自己資金があることが目標、1/2以上あるのが理想です。

〈自己資金の原理原則〉

原則として、「通帳で確認でき、かつこれまでの仕事等の給料等からコツコツ貯めてきた預・貯金(現
金)である
」と理解してください。

自己資金として認められるためには、通帳で確認できることが必須です。

〈自己資金として認められるもの〉

〇 コツコツ貯めてきた預貯金(入金の流れが通帳で確認できるもの)
〇 有価証券などを売却して作った現金
〇 自己所有の資産(車など)を売却して作った現金
〇 事業用として既に支出した設備資金相当額
✖ 消費者ローンなどから借りてきた現金
✖ 現物のままの有価証券等(現金にすれば可)
△ 親類、第三者からの借りてきた資金
〇 親類、第三者からの贈与された資金
△ タンス預金

自己資金として認められるかどうかは、その時の担当者によって相当差が出てきます。
親族から「借りてきた」資金は、自己資金として認められないケースがほとんどです。
タンス預金は信憑性が薄いので、融資申し込みの6か月以上前に通帳へ入金してください(日本政策金融公庫は通帳を過去6か月間確認します)。

4.窓口による創業融資の違い

1)日本政策金融公庫の創業融資制度

2)自治体の創業融資制度
  →都道府県 = 信用保証協会の保証がついて融資実行  
  →市区町村 =        〃

3)地方銀行、信用金庫独自の創業融資制度

日本政策金融公庫都道府県市区町村
分かりやすさ容易普通普通
融資限度額1,000~2,000万円1,500~2,500万円1,000~2,000万円
貸出利率普通普通
信用保証料不要必要必要
行政からの利子補助なしなしあり(場合による)
行政からの保証料補助なしなしあり(場合による)
返済期間5年ほど5年ほど5年ほど
審査期間短い普通長い
面談回数少ない普通多い

日本政策金融公庫は他の創業融資制度に比べ貸出利率が高いですが、信用保証料を払う必要がない(通常は借入額の1%程度の保証料が発生する)ため、利子・保証料全体での負担はあまり変わりはありません。
審査期間・面談回数などの時間的コストを考えると、やはり創業融資は日本政策金融公庫を活用されるのが良いです。
ちなみに、日本政策金融公庫は融資額1,000万円まで支店決済、それ以上は本店決済となります。
当然、本店決済の方が審査が厳しくなります。

5.創業計画書の書き方に対する勘違い

日本政策金融公庫のホームページから「創業計画書」のひな形をダウンロードすることができます。
創業計画書の右上には、このように書かれています。

☆ この書類は、ご面談にかかる時間を短縮するために利用させていただきます。
  なお、本書類はお返しできませんので、あらかじめご了承ください。
☆ お手数ですが、可能な範囲でご記入いただき、借入申込書に添えてご提出ください。
☆ この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です。

可能な範囲でご記入とありますが、必ず埋めてください。
空白だらけの創業計画書は門前払いとなります。

また、創業計画書の「記載例」が日本政策金融公庫のホームページにありますが、内容が薄いためあまり参考にせず、創業の動機などは自身の言葉で書くようにしてください。
創業計画書に書ききれない場合は、A4用紙(レイアウト自由)に記入し添付資料として提出していただいても結構です。

なお、事業計画書については、コンサルタント・専門家によってその説明がかなり違います。
「日本政策金融公庫指定の創業計画書を使うと融資実行率が落ちる」とするコンサルタントの方もいますが、私の経験上違いはないように感じます。
正直申しまして、コンサルフィーを高くとる目的で書類を増やしている場合がほとんどではないでしょうか。

日本政策金融公庫のホームページからダウンロードできる「創業計画書」「月別損益(収支)計画書」をしっかり作り上げることが、書類作成では重要となってきます。

6.損益計画の妥当性についての判断指標

日本政策金融公庫のホームページに「小企業の経営指標調査」が公表されています。

これは、小企業の決算データをもとに収益性や生産性などの指標値を集計したものであり、
日本政策金融公庫では、融資希望者から提出された「月別損益計画書」の妥当性についてこの経営指標をもとに判断をしています。

経営指標(業界平均)と著しくかけ離れた損益計画書などは、当然その説明を求められます。

7.自己資金、過去の経歴、損益計画書のうちどれが重要か

全体を100とした場合、それぞれ重要度は自己資金50、経歴(勤務経験)30、損益計画書20です。

配分は私の主観によるものですが、自己資金が最重要、次いで経歴が重要だという点は間違いありません。

自己資金・経歴に共通するのは「過去の実績」だという点です。
事業計画書(損益計画書)も重要ですが、これはあくまで「これからの目標」でしかありません。

将来独立すると決めていたのなら、それに向けてお金を貯めていることは当たり前であり、自己資金が少なければ計画性が疑われます。
経歴についても同様に、独立するための技術力・運営力などのノウハウは事前の習得が必須です。
これがなければ、思い付きで行動しているのではないかと疑われます。
自己資金と経歴は、準備の度合いと熱意に比例します。

また、公共料金、家賃、住宅ローン、クレジットカードの支払いが遅れていると信用力が著しく低下するのでご注意ください。(個人のクレジット信用情報などは、CICという情報機関で簡単に調べられます。)