せどり事業者① インボイス対応

最近はせどり事業を行うクライアントが急速に増えており、これらの事業者さまからよく「インボイスへの対応どうすべきか」というお問い合わせがいただきますのでこれについて書いていきます。

結論から申しますと、ほとんどのせどり事業者の方にあってはインボイス制度はそれほど気にする必要がないと考えています。

従来通り、年間売上高が1,000万円以下の事業者にあってはそのまま免税事業者としての恩恵を受ける。年間売上高が1000万円超の事業者(課税事業者)にあっては、適格請求書発行事業者として登録する。という風にシンプルに考えていただければ充分です。


そもそもインボイス制度とは何かという話になりますが、「インボイス」とは、その請求書に適用される消費税率や消費税額の記載を義務付けた請求書のことを指します。

インボイス制度が始まった後は、請求書の中で

・請求書の中に消費税率8%or10%を区分して記載する。
・消費税率ごとに区分した合計税込金額を記載する。
・請求書等発行者の登録番号を記載する。

上記を記載する必要が出てきます。

これらの要件を満たした請求書でなければ、その請求書を受け取った側(仕入側)で消費税の仕入税額控除を受けらけれなくなります。

通常、決算時に納める消費税の計算は、【売上にかかる消費税額-仕入にかかる消費税額】で計算され、この差額を税務署に納める必要が出てきますが、「仕入税額控除を受けることができない」というのは、「仕入にかかる消費税額として引けなくなる」ことを指します。

そしてインボイス制度の肝は、請求書に請求書等発行者の登録番号を記載する必要がある、という点です。

この請求書等発行者の登録番号の交付は課税事業者でしか受けることができません。
インボイスに対応した請求書を発行しようとする場合は、年間売上高が1,000万以下であっても課税事業者を自ら選択する必要があります。

同じ金額を支払うとして、免税事業者から仕入れた場合は仕入税額控除を受けれないため、同じものを課税事業者から購入するのに比べて10%(消費税相当)割高になります。すなわち同じものを購入するのであれば免税事業者からではなく課税事業者から購入しようという流れが生まれ、結果的に免税事業者との取引を控える会社が増えてきます。

これにより、年間売上高1,000万円以下であっても自ら課税事業者となりインボイスに対応するしかなくなってしまう。これがインボイス制度=免税事業者潰しと言われる理由です。

免税事業者が税制上不利になるというわけではなく、商取引の中で排除されていくため、結果的に免税事業者がいなくなっていく、内容となっています。

さて、ここから本題になりますが、冒頭に書いたせどり事業者はインボイス制度を気にする必要がないという点についてですが、前述した「免税事業者が商取引の中で排除されていく」というのはあくまでB to Bの世界(事業者対事業者)にあっての話で、B to C (事業者対消費者)については、さほど影響がないことが予想されます。

消費者からしてみれば、あなたが免税事業者か課税事業者かどうか、発行される請求書がインボイスに対応しているかどうかというのは、それほど購入動機に関係ないはずです。

もちろん、扱う商品が対事業者向けのものが多いのであれば、自ら課税事業者になってインボイス対応する必要もでてきますが、ほとんどのせどり事業者にあっては売り先は対消費者であることがほとんどなので、インボイス対応しているかどうかで売上高にほとんど影響は出てこないと想像できます。

また、せどり事業者の中には買い取り屋に対して売上が発生するケースも多くありますが、インボイス制度は古物商や質屋を対象外としています。

すなわち、免税事業者であっても課税事業者であっても、買い取り屋の買取価格に影響はありません。(もちろん買取金額はそれぞれの買い取り屋ごとが判断することなので、全く影響はないと言い切ることはできませんが、少なくとも税制上の有利不利は働かないので、買取金額に差をつける理由は生じません)。

インボイス制度について自ら課税事業者を選択しなければならないのか、と不安に思われる方も多くいらっしゃいますが、

・今まで通り年商1,000万円以下であれば消費税の納税義務はない(免税事業者)。

・年商1,000万以上であれば消費税を納める義務がある(課税事業者)+適格請求書発行事業者として登録する。

とシンプルに考えていただければ十分です。