銀行員から見た融資効率・実質金利について書いていきます。
銀行が各企業を評価するにあたって最重要となる資料は、やはり決算書です。
ただし、決算書が完全に全てというわけではなく、その他さまざまな状況を勘案して融資の判断を行います。
そのうちの1つに「融資効率」というものがあります。
融資効率の良い企業に対しては銀行も丁寧に対応していく。逆に言えば、効率が悪いところは訪問頻度を下げよう、決算書が悪くなったらすぐに手を引こうなどが起こりえます。
融資効率というのは、製造業で言う歩留まり率と同様の考え方です。
貸出金(企業視点では借入金)と預金のバランスで計算します。
例えば、貸出金3000万円、預金額2000万円の企業があった場合、銀行から見るとこの企業に対しては実質的に1000万円しかお金を貸していないといえます。
3000万円お金を貸しているけれど、会社側が2000万円自分の銀行に常においてもらえれば、その2000万円をまた別の企業に貸し出すことで更なる利息収入を得ることができます。
これは、融資効率が良いといえます。
銀行から見れば、融資効率が良い会社に対しては、プロパー融資など質の良い提案がしやすくなります。
また、会社が2期連続赤字を出してしまっても、融資効率が良いと「今まで非常に効率的な融資取引を自行と築けているので、しばらくは支援を続けたい。」と判断されるケースもあります。
同じような視点で実質金利という考え方があります。
上記の例でいえば、貸出金3000万円、金利1%(年間利息30万円)で貸し出している場合であっても、実質的な貸出額が1000万円であれば、実質的な金利は3%(利息30万円÷1000万円)といえます。
時々「実質金利が3%と高い水準にあるため、現在の金利をもっと下げることはできないか」と交渉する経営者の方がいますが、これはあまり推奨しません。
預金残高というのは経営者が自由に動かせますし、銀行から見ればその預金残高がキープされる保証などどこにもありません。
金利というのは複数の金融機関が競いあって自然と下がっていくのが理想であり、経営者自らが金利交渉を始めると「あの経営者は金利しか見ていない」と判断され、金利で競いづらい小規模の信用金庫などが、融資に消極的になる可能性があります。
銀行員からすると、日々の入出金の情報や預金残高というのは非常に重要な情報です。
言い換えれば、経営者が借入金残高の状態に合わせて通帳残高をコントロールするというのは、財務上重要な考え方といえます。
複数の銀行と融資取引をする際には、1つの銀行に預金残高を集中させるのではなく、各銀行の融資残高に応じて各口座へ預金を分散することが重要です。