借入金の資金使途違反について

資金使途違反という言葉をご存知でしょうか。

「設備購入」「新店舗開店」などの理由で借入をしたのに、本来の目的と異なった使い道をする場合などを指します。中小企業の経営者の方では悪気なく該当してしまっているケースもあり、これらは後々大きな問題となる危険性を含んでいるため注意が必要です。


資金使途違反の具体例を挙げると

  • 設備資金で借りた資金を運転資金に回すケース
  • 設備の見積金額を高めに作成してもらい、後のバックしてもらうケース
  • 運転資金で借りた資金を役員、関係会社へ又貸しするケース

があります。


実際には①のケースはほぼありません。
「店舗の内装工事をするので1,000万円貸してください」と言った際には、内装業者に対する振込依頼書を銀行が融資実行前に預かり、融資をした瞬間にその内装業者へ直接振り込む段取りをとるため、そもそも運転資金に回すことができません。


②のケースは少なからずあるようです。
業者から見積書を1,000万円で作成してもらい銀行から設備資金を1,000万円借り、実際に支払いを完了した後に業者から別の銀行口座に200万円バックしてもらう方法(実際の設備代金は800万円)です。
これについても、その後の決算書を見て「1,000万円の設備が貸借対照表に載ってるか」で比較的簡単に判明します。


そして、資金使途違反で一番気を付けたいのが③です。
「銀行から運転資金で借りたお金は何に使っても良い」と考えている経営者の方は多いですが、運転資金として受けた融資は、会社の事業活動の支払いに充てるのが原則です。
運転資金であっても借りたお金を「役員貸付」や「関係会社貸付」に回すのはご法度であり、これらも資金使途違反として、銀行や信用保証協会から判断されることがあります。

実際の融資で得た資金をそのまま社長へ貸し付けたのでなくても、会社から社長などへの貸付金がだんだん増えていったら、融資で得た資金が数カ月かけて結果的に社長への貸付金に流れたと見られてしまいます。

資金使途違反が発覚した際、最悪の場合一括返済を求められます。
ただ実際には一括で返せと言われるケースは稀です。追加融資の停止、つまり二度と融資せずに、現在ある融資残高が完済されるまで待つというスタンスに切り替わるのがほとんどです。

これだけ聞くと「その銀行との取引が止まるだけであればそれほどリスクはないのでは」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一番怖いのは「信用保証協会」が保証を止めることです。

信用保証協会からの信用保証が受けられなくなれば、全銀行からの資金調達に影響が出ます。

気づかないうちに資金使途違反を起こしてしまっているケースもありますので、十分ご注意ください。