資金繰り安定は年度資金の調達から

「年度資金の調達」という言葉をご存じでしょうか。

銀行員の方もよくこういった言い方をしますが、これは「向こう一年間で銀行へ返済する資金を前もって借りてしまう」ということです。

、、、なんか分かりづらいですね。

例えるなら「当期一年間で借入金の返済が合計2,000万円あるから、先に返済資金として2,000万円貸してくれない?」と銀行にオーダーするということです。
そんなことが可能なのかと疑問に思う方が多いと思いますが、決算が黒字なら比較的通ります。

借入金の返済原資を毎期の利益から用意できる企業というのは意外と稀でして、返済が進めば進むほど手元資金が減っていくのが一般的です。
これによる運転資金不足をカバーするのを目的として折り返し融資や巻き直しが行われるのであって、「返済された分を追加で貸す」というのは銀行員からしてみれば普通のことです。

「手元資金が減ってからその都度調達を行う」のではなく、「余裕があるうちに事前に借りておく」のが年度資金調達の基本的な考え方です。
日々の資金繰りに頭を悩ませている時間が勿体ないですし、そんなことに脳のリソースを割くぐらいなら、多少利息の支払いが増えたとしても事前に手元資金を増強しておく方が健全な経営判断ができるはずです。

年度資金のオーダーを出すタイミングでおススメなのは「決算確定直後」です。
3月決算でしたら5月後半に決算書があがり、5月末~6月頭頃に銀行へ決算書を渡すと思いますが、この時が交渉のチャンスです。

期首付近である程度の資金調達を完了させておくと、期中は資金繰りの悩みから解放されます。
また2か月程度で試算表を要求してくる銀行員はまずいませんから、比較的スムーズに交渉できます。
そして、複数の銀行と取引しているのであれば「他の銀行にも少し前にお願いしていて今返事待ちなんだけど、もしそちらの銀行にお願いするとしたらどの程度協力してもらえる?」と聞けば、ものすごいスピード感で、良い内容を持ってきてくれます(もちろん最初に交渉した銀行との関係を悪くしないよう配慮は必要です)。

年度資金の調達を行う際には、事前に各銀行借入の返済予定表をまとめておくことが大切です。
各銀行の借入返済予定表を集めてエクセルへ入力し一覧にしておけば、銀行員へ説明する際の説得力が上がります。

弊事務所でも決算後に「銀行別借入管理一覧表」を作成しお渡ししておりますが、こういった資料があるとないとでは銀行交渉に大分差が出てきます。
実際に調達交渉をされる際は、形やクオリティは問いませんので借入返済予定をまとめた一覧表(向こう一年間の銀行別の毎月返済額、元本残高が分かる一覧表)を作成するようにしてください。