銀行が一番重視するのはその企業がちゃんと返済してくれるのかどうか、企業が潰れずに存続し続けるかどうか、いわゆる「デフォルト率」です。
デフォルト率=債務不履行(貸出金の返済が滞る)になる確率です。
デフォルト率の計算は銀行ごとに違いはありますが、元々の仕組みを作った帝国データバンクでの指数・属性を参考にしている場合がほとんどです。
その中身は変数が多くて結構ブラックボックスになっていますが、流動比率をはじめとする教科書的な財務分析の重要度は全体の10%に満たないです。
というのも、中小企業の破綻数と流動比率などの財務分析指標に数学上の相関関係がないからです。
流動比率はもちろん、当座比率、固定長期適合率などこれら財務指標はデフォルト率と何の関係もありません。
現場のほとんどの銀行員も肌感覚で「財務分析って意味ないよね」と理解しています。
デフォルト率と唯一最大の相関関係があるのは、粉飾のしづらい経常収支比率ぐらいです。
経常収支比率は「現ナマ収支」とも呼ばれ、「損益」ではなく「現金収支」がプラスかマイナスかによる判断です。
(もちろん設備投資を行ったり新規借入を行ったりという部分を除いた、営業活動でいくら稼いだかという話です。)
一年間で1億円お金が入ってきて9,000万円お金が出て行ったら1,000万円お金が増えており、この場合の経常収支比率は110%です。
反対に1億お金は入ってきたけれど1億500万円お金が出て行ったら経常収支比率は95%です。
経常収支比率が100%を下回ってるということはキャッシュアウト企業ということです。
当たり前ですが、商売で現金が増えていれば潰れないし、現金が減り続けているならいつかは倒産しますので、経常収支比率はデフォルト率との相関関係が高く、銀行が格付け評価を行う際もこの部分を非常に重視しています。
なお、経常収支比率は決算書にそのものとしては一切出てません。
Googleなどで調べれば計算式は出てきますので、自社の決算書を見ながら電卓を叩くことで計算できます。
難しければ顧問税理士などに問い合わせれば計算してくれるはずです。(ここで書くと長ーくなるので割愛いたします。)
最後に、財務分析というのは、年商5億円、10億円と会社規模が大きくなってきて、社長の目で全体を見渡せなくなったときに代替案として利用するものです。
「経営者たるもの数字が読めなければいけない!」というのは年商3億円未満の中小企業にあっては言い過ぎだよな、というのが私見です。
「感覚的に数字を掴んで、その答え合わせとして税理士からの月次報告を聞く」ぐらいのスタンスでうまくいっている企業は意外と多くあります。