収益はできるだけ上に、費用はできるだけ下に

皆さまはPL(損益計算書)の利益で一番重要なのはどれだと思いますか。


PLには各段階の利益として、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益の5つがあります。各段階の利益の意味は以下の通りです。

・売上総利益…いわゆる粗利

・営業利益…売上総利益から販売費等の一般経費を差し引いた後のその会社の本業利益

・経常利益…営業利益に営業活動外の損益(支払利息、雑収入など)を反映した後の利益

・税引前当期純利益…経常利益に特別損益(保険解約益、災害損失など)を反映した後の利益

・税引後当期純利益…税引前当期純利益から法人税等を引いた後の最終利益


よく「銀行融資を申し込む際にはどこの利益が重視されますか?」という質問をいただきます。

どの利益もそれぞれ意味があり重要ではあるのですが、あえて挙げるとすれば「営業利益」と「経常利益」です。

この2点が両方ともプラスになっていることが融資の現場では重要です。

このため、銀行評価を意識した決算書を作成する際は「収益を出来るだけ上に、費用を出来るだけ下に」くるように様々な調整を行います。

例えば本業以外で家賃収入がある場合、家賃収入は本業以外の収益のため「雑収入」に計上されます。

雑収入で計上すると「経常利益」には含まれますが「営業利益」には含まれません。このため下記のような決算書が実務上よく発生します。


売上高  300万円
販売費等△400万円
営業利益△100万円
雑収入 +200万円
経常利益+100万円


上記の決算書は銀行から「本業では赤字だけれど、本業以外の副収入でなんとか黒字となっている会社」と判断されてしまいます。

これを避ける方法として、「家賃収入」を「売上高」に計上できないかを検討します。



売上高の定義は「企業の主たる営業活動(販売・サービス)によって得た収入」である。

               ↓

企業の主たる営業活動か否かは、その会社の「定款」で判断する。
(定款の「事業目的欄」に書かれている内容がその会社の主たる営業活動)

               ↓

定款を書き換えて、事業目的欄に「不動産賃貸業」を追加する。




こうすることで、今まで雑収入で上げていた家賃収入を売上高として計上することができるようになり、決算書も下記のように、営業利益・経常利益ともに黒字になります。

売上高  500万円(不動産賃料を含む)
販売費等△400万円
営業利益+100万円
雑収入   0万円
経常利益+100万円

決算書とは、その会社の財政状態や経営成績の真実の姿を表すものですが、その真実自体を変える(定款変更し事業目的を追加する)ことで決算書の評価を向上させることも可能であり、税理士の腕の見せ所だったりもします。

もちろんやりすぎると粉飾決算です。法律守りながら、バランス見ながらです。