架空在庫、不良在庫の見破り方

銀行員が不良在庫(デッドストック)や架空在庫をどう見破るのかについて

銀行員から「倉庫を一度見せてください」と言われた経験がある方はいらっしゃいますか。

銀行員からこのようなことを言われると、何か疑いの目を向けられているのではないかと感じてしまいます。

ただ、実際問題として銀行員も普通のサラリーマンですので、倉庫に行って実数を把握し、決算書に表示された棚卸金額が適正であるかどうかなど、判断できるはずがありません。


もちろん、棚卸資産として表示された金額が数百万円あるにもかかわらず、倉庫の中が空っぽであったりと極端な場合は別ですが、同業者でない限り、倉庫の中をパッと見てこれが適正在庫かどうかを客観的に判断することはほぼ不可能です。

ただし、「倉庫を一度見せてください」と言われたのであれば、銀行員から何らかの疑念を持たれている可能性が高いのは事実です。


銀行員は、その会社の棚卸資産の金額が適正かどうか(不良在庫や架空在庫がないか)を判断するのに、「棚卸資産回転期間」という指標を用います。


棚卸資産回転期間=棚卸資産÷平均月商
(平均月商は、P/Lの純売上高を12か月で割って算出)


決算書に載っている棚卸資産の金額が、その期の平均月商に比べてどの程度の比率を占めているかを表す指標です。

ちなみに棚卸資産回転期間というのは、一期だけ見てもあまり意味はありません。

業界平均と比べてどうかという判断を行うことはできますが、棚卸資産の多さは商品のバリュエーションの現れでもあり、その会社の販売戦略にもつながっているため、これをもって在庫の多い少ないは判断できません。

どのように見ているかというと、過去の決算書との比較で見ていきます。


過去3年5年と比べて回転期間が長くなっている(月商に比べて棚卸資産が増加している) のであれば、銀行員は疑問を持ちます。

その後社長へ聞き取りを行い、例えば「最近は納期短縮のため在庫を大目に持つように心がけている」など正当な理由があれば問題なしとされますが、もし特別な理由も見つからなければ、不良在庫があるのではないか、棚卸在庫を粉飾しているのではないか、と疑念を持たれます。


もちろん、在庫粉飾など行っていないのであれば大きな問題にはなりません。

ただし、倉庫の隅っこに眠っているデッドストックが、銀行から不信感を持たれる原因となっているケースもありますので、該当する方はある程度時期を見て処分されることをお勧めします。