銀行への決算説明のポイント

杉本和生税理士事務所の杉本です。

今回は、銀行員に対する決算説明のポイントを5つに分けて書いていきます。



① 雑談は少なめに、だらだら話さない

銀行員は基本的に長話が嫌いな人が多いです。

銀行員一人に割り振られる担当件数は50件から多いと100件近くなります。

非常に忙しい中で各会社を回っていますので、1社1社に時間をかけて対応するということが非常に厳しいのが実情です。銀行員を長時間拘束して説明しても「決算説明責任を果たす社長」というポジティブな受け止められ方ではなくて、「話が長い社長」「自社の説明をするのが(ダラダラと)下手な社長」とみられるケースが多いので、決算報告であっても30分~1時間程度を目安にお話ししてください。

コンパクトかつ具体的に説明できるよう、事前に準備されると良いです。
ちなみに、どの箇所を説明すればよいかわからないときは、会計事務所が社長に対して行う決算報告を参考にするのが良いでしょう。



② 決算説明は二期比較で行う

1年分の決算書だけで読み取れる情報というのは案外少ないものです。

我々がお客様の決算書を分析するときもそうですが、何期分か並べて見てみないと企業の動向は分かりません。

1年間の決算書だけをみながら、ここがこうです、そこはこうですという話よりも、前期との決算比較をしながら、

「前期は単発の大型受注があった。その影響で当期のほうが売上総額は少なくなっているが、毎月の受注量は当期のほうが多い」「材料価格高騰で粗利率が2%悪化した。現在販売価格に転嫁できないか価格交渉中」「従業員が1人増えたから人件費が増加した」など具体的な説明ができ、説得力が増します。

加えるなら、決算書だけでは月々の展開が見えづらいので、月別の売上高など別紙で用意すると更に良いです。

とにかくこういった年次、月次での「変化」に対して銀行員というのは非常に敏感です。

その変化があったときに、経営者がどういう判断をしてきたかというのを見てきますので、前期の決算書と比較して当期はどうなのか、丁寧に説明していくのが良いです。



③ 現在の状況を説明する

決算説明というのは、通常決算月から3ヶ月目に行っているケースが多いと思います。決算説明をする時点で、既に当期は最低でも2ヶ月経過しているので、前期決算説明も重要ですが、今現在の動向がどうなのかというのも非常に気になるところです。

「前期の赤字決算を受けて、当期1ヶ月目2ヶ月目で具体的にこういったコスト削減をしている。」「前期売上が低調だったが、当期は○○社からの受注見込みがある」など、当期に入ってからの具体策を付け加えて説明できたら良いです。

経費削減については役員報酬もそうです。社長として、赤字だから役員報酬を削減するというのは当然の責任の取り方です。

銀行員というのは非常に疑い深いです(人格ではなく、そういう仕事柄です)。

業績が落ちているのに社長の役員報酬を下げないのであれば、何を話しても説得力がありません。
(もちろん月額報酬30万円の社長に対して更に下げろという話ではなく、月額報酬200万円で生活に余裕があるなら150万円まで減額できるだろう、という話です。)話に説得力を持たせるため、今このときにどういったことをやるのかというのは非常に注目されますので、ここも説明いただきたい部分です。



④ 来期(進行期)決算の着地見込みについて

気が早いような気もしますが、来期の決算着地見込みも話す必要があります。

現状足元の説明を受けた後、今年1年どうなるのか? ということが銀行員も聞きたいのです。可能なら、1年間の月次事業計画を作成してください。毎月毎月、こういった数字を元に予測していて、年間で言うとこれぐらいの着地見込みになる。それが黒字なのか赤字なのか、ちゃんと経営者がイメージしているというのは非常に重要です。

話の展開としては、当期決算を受けて進行期はすでにこのような経営を行ってきていて、このままいけば結果としてこのぐらいの着地を予想しています、という流れです。

数字を盛ってはいけません。過去から未来への数字の流れが自然であれば、納得考えられる決算報告になります。



⑤ 今後の資金調達計画

銀行員に対する決算説明の最大のポイントはここです。

資金調達計画の説明を行わない経営者の方がほとんどかと思いますが、銀行員からすれば一番聞きたい内容です。

銀行員の成績というのはお金を貸すことで発生します。お金を返してもらうことで評価される銀行員は皆さんの担当にはいません。彼らが知りたいのは、いつ貸したらいいのか、いくら貸したらいいのかです。

④の月次事業計画とも繋がりますが、「来期は毎月の売上・経費・利益がこうなって、毎月の銀行返済はいくらなので、このタイミングで資金を銀行からいくら調達するとお金が回る」など話していただくのがベストです。月次事業計画を作るのが難しければ、口頭で説明するだけでも十分効果はあります。資金調達というのは必要になったときに銀行と連絡を取るのではなく、決算説明時などで事前にアピールしておくことを強くお勧めします。

決算説明の最大のポイントというのは、過去、現在、そしてこれから、いついくらを調達すれば会社の資金繰りが安定するのかをアピールする場だと思って準備していただければと思います。